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トラック運送業界における「カスハラ」とは
企業が顧客や取引先化から嫌がらせや過度なクレームを受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は、さまざまな業界で問題となっており、運送業界も例外ではありません。
そこで国土交通省総合政策局政策課は、2025年1月17日に国が実施した「第1回カスタマーハラスメントの防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」に際して「国土交通省におけるカスタマーハラスメント対策の主な取組について 」と題した資料を制作し、そのなかで運送業界におけるカスハラ対策についても紹介しています。
本記事では、カスハラの概要について改めて紹介したうえで、運送業界におけるカスハラの実態や、行われている対策などについて解説していきます。

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、2010年代前半から広く使われるようになった言葉で、具体的には企業が顧客や取引先から受ける以下のような著しい迷惑行為を指します。
- ● 暴行
- ● 脅迫
- ● ひどい暴言
- ● エコドライブの実践
厚生労働省の「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、過去3年間に顧客や取引先などからの著しい迷惑行為を1度以上経験したと回答した割合は15%にのぼりました。
これを受け厚生労働省は、2022年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成し、各企業に対策を促しています。
運送業界のカスハラは荷主企業や元請け企業から行われるケースが多く報告されています。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- ● 長時間の荷待ち(52%)
- ● 契約にない付帯業務(17%)
- ● 運賃・料金の不当な据置き(15%)
- ● 過積載運送の指示・容認(5%)
- ● 異常気象時の運送依頼(3%)
運送事業者は、荷主との交渉において立場が弱い傾向にあります。そのためカスハラに該当するような場面であっても「改善を訴えたら契約を打ち切られるのではないか」などの懸念から、泣き寝入りせざるを得ないケースが少なくありませんでした。
運送業界の主なカスハラ対策としては、2023年7月より設置された「トラックGメン」の活動が挙げられます。
トラックGメンは、運送業界の労働環境改善や適正運賃収受を目的に、国土交通省が創設した専門部隊です。荷主から運送業者へのカスハラなどについて、当事者からの訴えを待つだけでなく積極的な情報収集を行い、不適切な行為が確認された場合には「働きかけ」や「要請」「勧告」といった法的措置を行います。
設立された2023年7月から2024年10月までの15ヶ月間で、勧告2件、要請176件、働きかけ955件、合計1,133件の法的措置が実施されました。これら法的措置の対象となった企業に対しては、以降もフォローアップが継続され、改善が見られない場合はさらに厳正な措置が実施されます。
「カスハラ」という言葉が広く知られ、問題視されるようになったのは2010年代前半のことですが、顧客や取引先からの嫌がらせや過度のクレームはそれよりも前から存在しています。「あって当たり前のもの」と考えるひとも少なからずいるため、根本的な解決には時間を要するでしょう。
しかし、それまで「あって当たり前」だったハラスメントが、問題として捉えられる用になった事自体が大きな進歩でもあります。トラックGメンの活躍など、解決に向けた具体的な対策も取られており、改善に向けた動きが進んでいます。
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