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消費者庁、EC事業者に対し「送料無料」の表示の見直しを要求
2023年12月19日、消費者庁 はEC事業者などに対し、「送料無料」表示の自主的な見直しを求める旨を発表しました。この要求の背景にあるのが、背景には、2024年4月以降に起こるとされている「物流の2024年問題」です。

物流の2024年問題とは、2024年4月より、トラックをはじめとする自転車運転業務の時間外労働に、年間960時間の上限が設けられることよって起こるとされている諸問題を指します。
時間外労働の上限規制自体は、働き方改革の一貫であり、労働者の健康やワークライフバランスを守るための施策です。
しかし、上限規制によってトラックドライバー1人あたりの労働時間が減ることで、走行距離や運べる荷物の量も減少し、従来どおりの輸送ができなくなることが危惧されています。この問題に何も対策を講じない場合、2024年度には14%、2030年度には34%もの輸送力が足りなくなる見込みです。
現在、Amazonをはじめとする多くのECサイトでは、「送料無料」の表示をおこなっています。これは消費者にとって一見魅力的に思えますが、本当にそうでしょうか。
送料無料の商品であっても、輸送がおこなわれる以上、そのためのコストは発生しています。送料無料と表示しておきながら、商品価格が送料を加味したものになっている場合、実際には消費者は得をしていません。この現象を優良誤認であると問題視する声がありました。
消費者庁は今回の発表のなかで、「商品価格3,000円+送料無料」のケースと、「商品価格2,500円+送料500円」のケースを比較し、「たとえ届く商品、払う金額が同じでも、3,000円分の商品が手に入る前者の方がお得だと勘違いしやすい」とする例を紹介しています。
また、「送料無料」の表示によって、消費者が輸送にかかるコストや手間を過小評価しがちになるといった問題も指摘されています。とくに再配達は、配達の二度手間になるため運送事業者にとっては大きな負担ですが、「送料無料」の表示がされていることで消費者から「どうせ無料だから良いか」と軽く捉えられてしまいがちな現状があります。
こうした課題を解決するためには、輸送コストについての正しい知識を、消費者に広めていく必要があります。今回の「送料無料」の見直しを求める働きかけも、そのための施策のひとつといえるでしょう。
かねてよりドライバー不足が叫ばれてきた運送業界ですが、2024年問題により、よりいっそう厳しい状況となることが見込まれています。この問題に適切な対策を講じなかった場合、輸送力の不足は避けられず、運送事業者や荷主企業はもちろん、消費者一人ひとりに至るまで、大きな不利益を強いられることになるでしょう。
そのような事態を避けるためには、運送業界の現状や、輸送コストの正しい知識を啓蒙しなければなりません。そのための第一歩として、消費者庁が今回、これまで多くの誤解を生んできた「送料無料」表示の見直しを求めたことには大きな意味があります。
とはいえ、今回の働きかけは、あくまで自主的な表示の見直しを要求するもので、新たに制度を設けるものではありません。各EC事業者がどのような対応を見せるのか、注視する必要があるでしょう。
文/BUY THE WAY lnc.
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