> > 幹線中継輸送サービス「SLOC」の実証開始 ドライバーの長時間労働の改善に期待

ドライブワーク通信

幹線中継輸送サービス「SLOC」の実証開始 ドライバーの長時間労働の改善に期待

慢性的なドライバー不足や、「物流の2024年問題」など、物流業界が抱える課題の解決を目指し、業界の垣根を超えた7社が合同で、スワップボディコンテナを用いた幹線中継輸送サービス「SLOC(Shuttle Line Of Communication)」の実証実験を行います。

実証実験の期間は2023年7月10日(月)から14日(金)までの1週間。エリアは静岡県浜松市と埼玉県戸田市を中継地点とする関東~関西間です。実証実験に参加する7社は以下のとおりです。

  • ●株式会社デンソー(以下「デンソー」)
  • ●アスクル株式会社(以下「アスクル」)
  • ●エレコム株式会社(以下「エレコム」)
  • ●タカラスタンダード株式会社(以下「タカラスタンダード」)
  • ●三井倉庫ロジスティクス株式会社(以下「三井倉庫ロジスティクス」)
  • ●安田運輸株式会社(以下「安田運輸」)
  • ●大和ハウス工業株式会社(以下「大和ハウス工業」)
なお、この実証実験では、荷主が荷役作業を行う「荷役分離」や、異業種による複数の荷物を同じコンテナに積載する「混載輸送」も同時に行われます。

背景となる物流業界の課題

慢性的に続くドライバー不足は、現在、物流業界が直面する最大の課題といって差し支えありません。人材を確保できない理由のひとつとして、物流業界に根付く、長時間労働の常態化があります。厚生労働省の発表によると、令和4年の時点でトラックドライバーの平均労働時間は、全産業の平均よりも年間で約400時間長くなっています。

このような長時間労働を改善するために、2024年4月以降、働き方改革関連法案により、ドライバーの時間外労働に年間960時間の上限が設けられることになっています。この上限規制により、ドライバーの労働環境が改善することが期待されています。

しかし一方で、ドライバー1人あたりの労働時間が制限されることにより、運べる荷物の量が減ってしまうことが予想され、「2024年問題」として懸念されています。日本ロジスティクスシステム協会によると、2025年までに約27%、2030年には約37%の荷物が運べなくなる見込みです。

SLOCとは

今回実証実験がおこなわれた幹線中継輸送サービス「SLOC」は、2024年4月以降の上限規制を守りつつ、輸送量を保てる仕組みとして期待されています。

SLOCでは、コンテナ部分が着脱できるスワップボディコンテナ車両を用います。輸送ルートに設けられた中継地点で、トラックからトラックへ、バケツリレーのようにコンテナを受け渡し、荷物を運びます。

1台のトラックが長距離輸送をおこなう従来の方式では、担当するドライバーの労働時間が長くなりがちでした。さらに輸送先での宿泊も伴うことで拘束時間が長く、ドライバーにとって大きな負担となっていました。

しかし、SLOCであれば、各ドライバーは担当するエリアのみを往復すれば良いため、労働時間を抑えることができ、宿泊なども必要ありません。

荷役分離による負担軽減にも期待

コンテナを分離できるスワップボディコンテナ車両であれば、荷主が荷物の積み降ろしを行う「荷役分離」や、異なる荷主が同じコンテナに荷物を積載する「混載輸送」も容易になります。

特に荷役作業は、これまでトラックドライバーにとって大きな負担でした。特に荷役作業のために待機する「荷待ち」時間は、1運行あたり平均90分以上にものぼり、長時間労働の主因のひとつでもありました。

荷役分離によって荷主側が荷役作業をおこなうようになれば、荷待ち時間の大きな削減になり、これも労働時間の削減につながります。さらに体力の必要な荷役作業がなくなれば、女性や高齢者もトラックドライバーとして活躍しやすくなるため、ドライバー不足の改善も期待できるでしょう。

実験の概要

今回実施される実証実験の検証項目は以下のとおりです。

  • ●1日6便(関西発3便/日、関東発3便/日)を運行し、事前に合意したスケジュール通りに運行できるかの検証
  • ●中継地点に複数台のコンテナが置かれた場合でも、ドライバーが間違えずに脱着できるオペレーションの確認と課題の検証
  • ●スマートフォンとQRコードを活用したコンテナ管理システムの利便性確認
  • ●複数荷主の貨物を混載輸送した場合の役割分担や責任区分の確認と課題の検証

今回実証実験が行われる幹線中継輸送サービス「SLOC」は、ドライバー不足や長時間労働など、運送業界が直面する課題の解決策として期待されるものです。今後検証が進み、本格的に導入されていけば、長距離輸送に伴う拘束時間の長さや、荷待ち・荷役の負担も大きく軽減され、トラックドライバーの働きやすさが大きく改善する可能性があります。

文/BUY THE WAY lnc.

ドライブワーク通信バックナンバー
  • ヤマト運輸、置き配の荷物に対応した保険を販売開始
    2025年10月、ヤマト運輸株式会社は、置き配のトラブルにも対応した賃貸住宅向け火災保険「クロネコ『家財もしも保険』」の販売を開始しました。
  • 特定技能制度とは?外国人人材の登用はトラックドライバー不足につながるか
    2024年3月、特定技能制度の対象分野に「自動車運送業」が追加されました。これにより、一定のスキルを持つ外国人人材を、即戦力のトラックッドライバーとして採用することが可能になりました。本記事では、特定技能制度の概要や、自動車運送業が対象になった背景、外国人ドライバーの現状の活躍や、今後の展望などについて解説します。
  • 11月ツアーについて
    2025年4月から受け入れが可能となった外国籍ドライバー。今、多くの運送会社様が注目している制度だといえます。しかし、まだまだ導入に踏み込むことが難しいと感じる企業も多いと思います。その理由としては進め方への不安や何もわからない上にリスクがある中、料金が高すぎるといった理由が多く寄せられています。そこで、そういった悩みを解消すべく、11月19日(水)~21日(金)にネパール現地視察&面接ツアーの開催が決定いたしました。また、その中には特別キャンペーンも組み込んでおります。今回はその内容についてご紹介いたします。
  • 外国籍ドライバーが日本で働くための関門
    2025年4月から導入された自動車運送業の特定技能制度。外国人が日本で働くためにはいくつかの「壁」があります。今回は、特定技能1号「自動車運送業」として日本で働くにはどれだけの壁があるのかを紹介します。
  • 現地面接、ツアーについて
    我々アズスタッフは、10月6日~17日にかけ、ネパール現地面接および現地視察ツアーを開催します。そこで今回、参加企業様を大募集しております。今回は実際にどんなことをするのか、現地での行程、何を見ることができるのかなどご紹介させていただきます。

ドライブワーク通信一覧へ

Copyright (c) Az staff Inc. All Right Reserved.