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ドライブワーク通信
今後の自動運転トラックが及ぼす影響とは
世界中で、運転手の不要な無人走行車の実用化に向けた動きが進んでいます。
例えば、アメリカではgoogleやヤフーといった企業が無人運転車の技術開発に参入し、各社がしのぎを削って実験を行っています。
例えば「Starsky Robotics」は自動運転トラックの技術開発を行うスタートアップです。彼らは遠隔操作できるシステムを開発しており、離れたところからプロのトラックドライバーがハンドルを操作し、無人のトラックを運転するといった実験をすでにスタートさせています。
日本政府も、すでに車の無人走行の実用化に向けて動き出しています。
安倍晋三内閣率いる「未来投資会議」は、今年度2月16日、自動運転車の実用化の実行計画をまとめました。
一番の狙いは長距離輸送トラックの自動運転化です。といってもいきなり無人化するのではなく、最初は高速道路でのトラックの隊列走行の実験から始まる予定です。
先頭車両は有人で運転し、後ろから追走する車両を無人で運転するというもの。これは、長年深刻化しているトラックドライバー不足を解消する手段として注目されています。すでに18年の1月に新東名高速道路での実験が予定されており、2022年度以降に東京―大阪間での商業化を目指しています。
ヤマト運輸とディー・エヌ・エー(DeNA)は、宅配便の配達に自動運転技術を活用する実験を始めました。無人トラックが走り回るようになれば、トラックの稼働率が上がり、適正速度の巡航走行などの効果で燃費が改善されると予測されています。

トラックの自動運転化にはどのようなメリットがあるでしょうか?
一つはコスト削減です。トラックドライバーの給与平均はアメリカでは年間平均40000ドル(420万円ほど)です。自動運転車の場合、メンテナンスなどにかかる費用含めてかかるコストは年間30000ドルほどです。仮に、すべてのトラックを無人化した場合、事故によるリスク補償や様々な経費含め、全国で 168ビリオンドル(19.1兆円)ほど節約できる見込みです。
次に事故防止です。不幸なことに、大型トラック走行中の事故はアメリカでも大きな課題です。アメリカでは年間約3900人もの人々が、大型トラックの運転事故で命を落としています。その事故の99%はドライバーの運転ミスによるものです。これが、無人化しオートブレーキや速度低下のシステムを取り入れることで事故リスクを大きく下げられると技術者たちは考えています。
ただし、無人化したからといって事故率がゼロになることは決してありえないので、今後は予測されないリスクをどうマネジメントするかが無人化を進める鍵となりそうです。
では、将来的にドライバーの無人化が進めば、トラック運転手は不要な職種となってしまうのでしょうか?自動運転はトラックドライバーにとって、敵でしかないのでしょうか?全日本トラック協会の永嶋功常務理事は次のように述べています。
「ドライバーの負荷が減るという意味では自動運転には大いに期待している。しかし、トラックの運転は乗用車とは全く別物。高度で慎重な運転が求められるため、乗用車よりも何倍も精緻で厳しい制御機構が必要となる。実際、無人トラックでの車庫入れや縦列駐車などの技術は、アメリカでもまだ確立していない。無人トラックの実現には、解決しなければならない問題や課題が山積している」
実際のところ、アメリカなどで実用化を目指している無人走行は、あくまでも単調な高速道路などの運転を想定しており、複雑な都市部での運転に関しては、有人運転に切り替えることを想定しています。歩行者の多い都市部での無人走行はリスクが高く、ドライバーの経験知に委ねられる部分が大きいとのこと。
また機械が運転するといえど、機械の故障や突然のエラーなどは当然、想定されますし、道路状況は天候などで随時変わります。厳しい雪道やみぞれ、嵐、風雨など、様々な天候や道路のコンディションに合わせて柔軟にトラック操縦できる技術は、今のところ実験段階で、実用化には至っていません。まだまだこれから改良が必要のようです。

さらに、トラックが運んでいる荷物の種類は幾千にも渡ります。花や果物など、走り方や積み方で商品価値に傷がつくものもあります。ドライバーは運ぶ荷物の特性に沿って適した積み付けや走り方をしなければなりませんが、そこまでの走り分けや積み分けなどは、まだまだ実用化にはほど遠そうです。
「例えば、トレーラーは運転が難しく、彼らの車庫入れやバックスラロームなどの運転技術は簡単に真似できない離れ業である。そうしたプロドライバーの運転技術をボタン一つで簡単に実行できる仕組みをトラックに装備すれば、ドライバーにとっての負荷軽減となり、嬉しい限りだ」と、先ほどの永嶋理事は述べています。
アメリカのOtto社は自動運転トラックの商業化の時期を「すぐ」と述べているのですが、具体的には1年~2年以内になる見込みです。また、貨物の搬送までもを自動化できるわけではなく、もし実用化したとしても人間のドライバーが搭乗する必要は避けられません。
「自動運転+人間によるリモート運転」の組み合わせがこれからのトラック輸送業の鍵を握ることとなりそうです。
様々な状況に対し、臨機応変に対応出来るトラックプロドライバーはこれからも重要な輸送業の担い手として需要がありそうです。

文/BUY THE WAY lnc.
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