HOME > ドライブワーク通信 > どうなる今後のトラック業界について
ドライブワーク通信
どうなる今後のトラック業界について
2016年は燃料の原油高も落ち着き始めたことや、米大統領選でトランプ大統領が就任したことにより、米国内の経済成長への期待感による円安効果等が寄与したことで輸送数量や実働率、実車率 が大幅に改善、また燃料価格の下落も寄与したことで、営業利益及び経常利益も大幅な改善となった。
とりわけ輸送量の増加に大きな影響を与えているのは、インターネット通販による個人物流量の増加だ。今後も市場規模は成長を続け、2014年には12.8兆円となり、2018年には20兆円を超えることも予測されている。宅配や小売の輸送を担っているのは主に2トントラックと言われている中型車両。今後、EC業界の発展とともにますます需要が高まる見込みだ。

しかし、この急速な個人向け宅配需要の増加によってトラック業界では慢性的な人材不足が継続している。厚生労働省の調べでは2016年1月時点の「自動車運転の職業」の求人倍率は1.87倍であり、この先も売り手市場は継続すると予測される。
大手通販サイトのアマゾンは去年10月、配送ルートを最適化するため、全米40箇所に大規模な配送センターを整備、さらに輸送機をレンタルすることで自前の航空会社の整備にも着手していた。 アメリカ国内だけでなく、今後は日本でも同様に自社物流を導入する可能性がある。
また、ヤマト運輸は2013年に新たな物流の拠点としてオープンした「厚木ゲートウェイ」に続き、関西でも拠点の拡張に乗り出している。今後ますます新たな雇用の増加につながってゆくだろう。
通販サイト需要の高まりと連動して増えているのが、「シニア向け宅配サービス」である。
これは、歩行が困難であったり、介護が必要な高齢者の住む世帯に向け、定期的な食料品・介護用品の宅配や、食事の配送、日常の防犯対策や緊急時のサポートを行うサービスのこと。
この分野は輸送・運輸業と密接に結びついており、こちらも今後はニーズが見込まれる。
シニア向けサービスにおいては、きめ細かなサービスを提供する力と優れたコミュニケーション能力が必要なため、女性、男性ともにきちんと顧客のできるドライバーの需要が増加すると見込まれる。

上記のような通販サイトの需要増加に伴い、運輸業界では業務を一括受託する3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)が増加している。これはつまり、これまではトラックでの配送や倉庫での保管だけを請け負っていたところを、包装などの流通加工、配送時の顧客対応なども運送業者が請け負うということである。そのため、例えばある輸送業者でドライバーとして働いていて、将来的に加齢などによって退職したのちも、別の部署で働く機会を持てるということ。
3PLでは、ある程度の専門性を持った人材が求められる。ドライバーを続けながら勉強したり、研修を受けるなどして専門知識を手に入れることで、将来的には現場と知識を兼ね添えた管理者として大幅なキャリアアップも見込める可能性がある。
以上の点を踏まえても今後ますます発展してゆくであろう運送トラック業界。しかし現在は深刻な人手不足に陥っている。40代~50代の中年層の占める割合が全産業では34.1%であるのに対し道路貨物運送業では44.3%(トラックドライバーの人材確保・育成に向けて/国土交通省)と高く、将来的には高齢化によるさらなる人材不足が懸念される状況だ。
これには、今まで中小企業のトラックドライバーにおいて長時間労働や残業の発生、労働環境が厳しいことなどが長年問題視されてきたことが関係している。

そのため、政府や各運送業者は業務環境の改善や、安全性への配慮、人材育成に力を入れている。厚生労働省は中小企業に対する時間外労働に対する割増賃金率引上げを含む改正労働基準法(平成31年4月1日施行)を国会に提出した。国土交通省はガイドラインによる適正取引の推進や不適正な事業者への指導強化などの取り組みを行っている。
またトラック運送事業者、荷主、行政、関係団体が参加し、取引環境・労働時間改善をめざす「トラック輸送における取引環境、労働時間改善協議会」が中央と各都道府県に設置された。今後は国を挙げて労働環境の改善に乗り出してゆき、少しずつだが従来の「きつい、汚い、臭い」というイメージは改善していく見込みである。
また、前回の記事でもお伝えした通り、今年3月から「準中型免許」の取得が可能となる。
普通免許で乗れるのは総車両重量3.5トン未満のトラックで、小口配送の主流です。対して準中型免許で乗れるのは総車両重量7.5トン未満のトラックで、この免許を取得するとコンビニや宅配のルート配送を担っているいわゆる「2トントラック」などを運転できるようになる。
この新たな免許制度の施行によって、若手の業界流入者が増える見込みである。
全日本トラック協会では、新たにこの業界に就職を検討している人材に向けて、インターンシップを実施している。
これは、協会に所属している特定の運送業者での1日職場体験に参加することができたり、先輩社員から話を聞いたりできる制度だ。対象は若年層だが、これから転職する人に向けた説明会なども実施しているため、興味がある人は専門サイトから申し込んでみるのも良いかもしれない。
http://www.jta-internship.link/
文/BUY THE WAY lnc.
-
外国人ドライバー受入制度の新設
外国人ドライバー受入制度の新設 -
東大IPCがロボトラックに出資 2024年問題の早期解決を目指す
東京大学共創プラットフォーム株式会社(以下:東大IPC)が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(以下:AOI1号ファンド)は、株式会社ロボトラック(以下:ロボトラック)への1.5億円の出資を決定しました。ロボトラックは、自動運転大型トラックソリューションを開発する企業です。 -
新物流効率化法について解説 令和7年4月1日より施行
令和7年4月1日より、「新物流効率化法」が施行されました。これは従来の「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」を基に、名称と内容が改正されたものです。 -
高齢化が招く2030年問題とは? 運送業界への影響も紹介
「2024年問題」は、ここ数年の物流業界における大きなトピックでした。業界をあげてさまざまな対策をおこない、そのなかには実際に成果をあげているものもありますが、多くの事業者は依然としてドライバー不足や輸送力の低下といった問題に苦慮しているのが現実です。 -
「過剰包装ゼロ」を目指す包装環境改善協会 クラウドファンディングは初日で100%を達成と支持が集まる
近年、必要以上に多くの梱包資材を使用する「過剰包装」や、大きすぎる箱を使用する「課題包装」が問題視されています。