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トラック運転手の減少で日本の流通が危機に?!現状と対策
2016年に入り、ますますトラック運転手の人手不足が悪化しています。
日通総合研究所によると、2015 年度におけるわが国の実質経済成長率は 1.9%増でした。さらに、一般貨物の総輸送量は前年度に比べて 2.1%増と予測され、景気の好転が貨物輸送量を押し上げる形となりました。(※)
しかし、依然としてトラック運転手の不足は改善の見込みがありません。
例えば1997年に89万人いたトラック運転手の数は、2006年の92万人をピークに現在81万人にまで落ち込みました。そのうち15%は60歳以上と言われており、とりわけ若手の人材不足が深刻です。
どうして人手不足がここまで深刻化しているのでしょうか?
それは、Amazonを始めとするネットショッピングの急成長によってトラック運転手の需要がますます高まっているからです。特に大手ネット通販会社は「即日発送」などのサービスを提供しているところも多く、人手はいくらあっても足りません。また「時間指定」などの消費者にとっては嬉しいサービスも運送業者泣かせです。
スピーディーで正確な日本の物流システムを支えてきたトラックドライバーの不足は、今後の日本経済に深刻な危機を与えかねません。
このまま行くと通販サイトの「翌日配送」「送料無料」といった謳い文句が消滅しないとも限らないのです。
そのため、人材の確保に各社力を入れているのです。

厚生労働省はこうした深刻な人材不足の解消のため、各事業者に「実習併用職業訓練(実践型人材養成システム)」の実施を呼びかけています。
これは、新規学卒者等を採用、企業内での実習(OJT)と教育訓練、また機関等での座学等(Off-JT)を組み合わせて訓練を実施(6か月以上2年以内)する場合、事業者に対しキャリア形成促進助成金を支払うというもの。
また、就業者が「非正規雇用」の場合でも、「有期実習型訓練」(非正規労働者を採用、企業内での実習(OJT)と自社又は教育訓練機関での座学(Off-JT)を組み合わせて訓練(3か月以上6か月以内)を実施する)を実施する場合は、キャリアアップ助成金を活用できると呼びかけています。
また、女性ドライバーの子育てしやすい職場環境の整備に取り組み、育児期間中の代替要員を確保したり、育児休業取得者を原職等に復帰させる制度を導入することで、両立支援助成金を利用できます。
これらの助成金の活用を事業者に呼びかけることで、トラックドライバー人材を確保することを業界全体で促進しようとしているのです。
また、若者を採用するため、これまでの採用スタイルを思い切って変更した運送業社もあります。
名古屋のM社は、新卒の若者に限り、大型免許や中型免許のみならず、普通免許の保有も不問とし、採用後に取得をサポートする採用体制に変更しました。
「最近は大型免許は言うまでもなく、普通免許ですら保有していない若者も多い。普通免許すらも不問とし、採用後に取得してもらう」(M社)
教育に投資するコストは膨れ上がりますが、長期的な人材確保のためには仕方がないと言います。
また、50代で転職した男性は、転職後に企業のサポートを受けて中型免許を取得しました。
「50代で若手と言われる業界ですから、40歳を過ぎての転職でも、困ることはありませんでした。1社目が中型免許取得をサポートする会社だったので助かりました」(50代・Tさん)
今後は新卒採用時のみだけでなく、免許取得のサポートを受けられる事業者が増えるかもしれません。

また、求職者の懸念理由として一番に上がるのが「きつい・汚い・厳しい」というイメージです。
それを払拭するため、「労働条件の改善」「安全環境への取り組み」「運輸スペシャリストとしてのキャリア形成」に力を入れる事業者も増えています。
「就業後は『運転者適性診断』や、先輩社員の横について仕事を覚えるOJTを受けてもらいます。さらにマナー研修など社会人としてのスキルアップが期待出来る研修も用意しています。その後はリフトや小型クレーンの免許取得もサポート。さらに、将来的には運輸管理スペシャリストへのキャリアアップも可能。様々なキャリアコースを用意しています」(T社)
「ドライバーが家族と連絡が取れる体制の確保に力を入れています。GPS機能のある携帯電話を付帯させていつでも位置確認ができるようにしています」(G社)
「女性トラックドライバーの意見を取り入れ、制服を作成したほか、メイクルームや女性専用シャワーを設置しています」(F社)
このように、職場環境を改善する試みを各社行っています。

大きなニーズを受け、急速に変わりつつあるトラック運輸業界。
2015年の有効求人倍率を見ても、今後もトラック運転手の求人数が減ることはしばらくなさそうです。
現在転職や就職を考えている方は、サポートを受けられる事業者を探すなどして、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
文/BUY THE WAY lnc.
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